ホワイトペーパー

Lost in Translation

外国人投資家が使う10の投資用語と、日本のエージェントとのズレ

問題は英語ではありません。

投資文化の違いです。

PDF版をダウンロード(日本語)

こんな経験はありませんか?

利回りを説明したのに、投資家から別の質問が返ってきた

物件資料を送ったのに、違うデータを求められた

会話が突然、止まってしまった

日本の不動産エージェントは高度にプロフェッショナルです。問題は知識ではありません。

問題は、外国人投資家が不動産を見る「投資フレームワーク」が異なることです。

#1

CAP RATE

What's the cap rate?
「表面利回りは6.2%です」
🏢
"I mean cap rate."

日本

表面利回り(Gross Yield)

日本では物件の収益性を説明するとき、表面利回りを使うのが一般的です。これは日本の市場では十分に機能している指標です。

海外

Cap Rate(NOI ÷ Price)

海外では家賃収入から経費を引いたNOI(純収益)をベースに計算します。「実際にどのくらい利益を生むのか」を重視します。

ここで生まれるズレ

表面利回り / 収入ベース

Cap Rate / 利益ベース(NOI)

#2

COMPS

Can you show me the comps?
「周辺の相場はこのくらいです」
🏢
"I mean comparable sales."

日本

相場観・路線価

路線価、周辺相場、査定などを総合的に使います。エージェントの経験と感覚が大きく活きる部分です。

海外

Comparable Sales(事例)

「最近売れた似た物件」の具体的な成約価格データを重視します。市場価格に対して割安かを判断するためです。

ここで生まれるズレ

相場観重視 / 「だいたいこのくらい」

データ(成約事例)重視 / 「この物件がいくらで売れた」

#3

EXIT STRATEGY

What's the exit strategy?
「長期保有の投資ですね」
🏢
"I see."

日本

長期保有・安定収入

家賃収入(インカムゲイン)を目的とした長期保有が一般的。ずっと持ち続けることが前提です。

海外

Exit Strategy(出口戦略)

「いつ、いくらで売るか」を最初から計画します。5年後の売却や、価値を上げてからの売却を想定します。

ここで生まれるズレ

持ち続ける前提 / インカム重視

売る前提 / キャピタルゲインも視野

#4

PRO FORMA

Could you send a pro forma?
「マイソクを送ります」
🏢

日本

マイソク(概要書)

価格、利回り、図面、基本情報が1枚にまとまった非常に優秀な資料。日本の取引ではこれで十分です。

海外

Pro Forma(収支予測)

将来の収支予測をまとめた表。家賃収入、運営費、修繕費、NOIなどを年単位でシミュレーションしたもの。

ここで生まれるズレ

現状のスペック情報

将来の収益シミュレーション

#5

CASH FLOW

Is it cash-flow positive?
「利回りは7%です」
🏢
"I mean after financing."

日本

表面利回り

物件の収益力を示す指標として使われます。ローン返済額は個人の属性によるため、物件情報には含めません。

海外

Cash Flow(手残り)

ローン返済や経費をすべて引いた後、毎月手元に現金が残るか(Positive)持ち出しになるか(Negative)を見ます。

ここで生まれるズレ

物件の収益力

投資家の手残り現金

#6

VACANCY RATE

What's the vacancy rate in this area?
「現在は満室です」
🏢
"I mean the market vacancy rate."

日本

現況(Occupancy)

「いま満室かどうか」が最重要。満室稼働中なら、すぐに家賃が入る優良物件とみなされます。

海外

市場空室率(Market Vacancy)

エリア全体の需要を見ます。「いま満室でも、退去が出たら次は埋まるのか?」というリスクを評価します。

ここで生まれるズレ

現在の稼働状況

市場のリスク評価

#7

LIQUIDITY

How liquid is the market?
「人気のエリアです」
🏢

日本

人気の度合い

「駅近」「人気エリア」など、需要の強さで説明します。

海外

換金性(スピード)

「売りに出してから何ヶ月で現金化できるか」というスピードと、市場の取引量を気にします。

ここで生まれるズレ

需要の強さ

売却スピード・取引量

#8

DISASTER RISK

Is it in a flood zone?
「ハザードマップがあります」
🏢

日本

重要事項説明

ハザードマップの提示は義務ですが、リスク許容度は買い手の判断に委ねられることが多いです。

海外

致命的な投資リスク

日本は災害大国という認識が強いため、地震・洪水リスクには過敏です。保険料への影響も気にします。

ここで生まれるズレ

法定の説明義務

投資判断を左右するリスク要因

#9

MANAGEMENT

Who manages the property?
「管理会社があります」
🏢

日本

安心の仕組み

管理会社がいる=オーナーの手間がかからない、というメリットとして説明されます。

海外

コスト要因

管理手数料がいくらか、修繕対応は高いかなど、収益を圧迫するコスト要因として厳しく見られます。

ここで生まれるズレ

安心感・利便性

コスト・収益への影響

#10

COMPARISON

Can you compare these properties?
「マイソクを3枚お送りします」
🏢

日本

個別資料(マイソク)

それぞれの物件の個別の良さを伝える資料が中心です。

海外

横並び比較表

価格、利回り、リスクなどを一覧表にして、数字でドライに比較することを好みます。

ここで生まれるズレ

物件ごとの個別アピール

横並びの数値比較

問題は英語ではありません

ここまで見てきたように、外国人投資家との商談で起きるズレの多くは、英語力の問題ではありません。

日本の不動産エージェントの説明は、日本の市場では十分に合理的で正確です。ただ、海外投資家は「投資判断のフレームワーク」が異なります。

Cap Rate(利益ベースの利回り)
Comps(売買事例比較)
Exit Strategy(売却戦略)
Pro Forma(収支予測)
Vacancy Rate(市場リスク)
Liquidity(流動性)

必要なのは英語力ではなく、「投資判断の材料」を整理することです。

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